「は、はは……何言ってんだ、蒼依?」
「あんただって聞こえてんでしょ?あたしが家に入ったあたりからずっと聞こえてるじゃない」
こりゃ誤魔化しようがない。これ以上足掻いても無駄だろう。
俺は黙ってトイレへ向かい、扉を開く。
「えーと……」
「ふぇぇぇん!!」
……どうしたものか。トイレは済ませることが出来たらしいが、おそらく閉じ込められていたことが泣いた原因だろう。
「ねぇ、本当どうしたのよ……」
蒼依がこちらに近づき、トイレを覗く。そして、
「あんた何でこんなとこに女の子を監禁してんのよこの変態ーーーーーーーーー!!!!」
「ですよねぇーーーーー!!!」
俺は頭部に回し蹴りを食らった。し、死ぬ……こいつの回し蹴りは本当ヤバイぞ……。
とりあえず蒼依に事情を説明することになった。
「だからあの雪だるまから生まれたんだって」
「はぁ?そんなこと信じられるワケないでしょ。『僕が誘拐しました』って正直に言いなさいよ」
「何でそうなるんだよ!俺は誘拐なんかしてねぇって!」
「そもそも生まれるなら、こんなに大きいはずがないでしょ。見た目中学生くらいじゃない」
「それは……分からない」
本当分からない。どうしてこの子があの雪だるまから生まれたのか。その他諸々。
「信じてくれよ。それにこの子、喋れないみたいだし。何か生まれたての赤ん坊みたいなんだ」
「確かに……さっきから一言も喋らないし。声を発しても、泣き声だけだしね」
蒼依は人差し指を口に当て、考える仕草をする。
ようやく信じてくれたか。
「とにかくどうすんのこの子。あたしんとこじゃ面倒は見れないし……。あんたが面倒見るわけ?」
「それは……そうするしかないんじゃね?」
ギャルゲー的展開。これはかなりキタコレだが。でも面倒を見るのは結構厳しいかもしれない。
まず母さんに何て説明するかだよなぁ……。
「じゃあそうするべきなのかしらね……。……でもあんた、何か変なことしそう」
「しねぇよ!どんな目で俺のこと見てんだよ!」
「この年頃になったらそういうの考えたりするんじゃないの?」
「……否定はできない」
「へぇー。……こんの変態!!」
「うぉわ!あぶねぇ!」
何とか蒼依のパンチを避けることができた。こいつのをマトモにくらったら生きていられるかどうかだよな。
「まあそこらへんのことはお母さんと相談するしかなさそうね。そういえばさっきからこの子、花持ってるけど……」
「ああ、それは雪だるまから出てきたときから持ってたんだ」
「そうなの?でも、……」
蒼依が首を傾げながら、その花を見る。
「これ……冬に咲く花よ?夏に咲くワケ、ないじゃない」