【プロローグ】

 

12月24日。少年が6歳の頃のことだ。

「わぁ、雪だ!お母さん、雪降ってるよ!」

「そんなにはしゃがないの」

少年の母は呆れながらも微笑む。少年は無邪気な笑み漏らしながら外へ出た。

外には大量の雪が積もっていた。少年はその雪に飛び込んだ。

「あははは!こんなにいっぱいなの久しぶり!」

大いに喜ぶ少年。少年は雪を丸め、雪だるまを作り始めた。

数十分かけて作ると、自らの身長と同じほどの雪だるまが出来上がった。

「やったー、出来た!お母さん、出来たよ――」

少年が母を呼ぼうとしたとき、ふと黒い物が目に入った。

先ほどまでなかったはずの物が、雪だるまの近くにあった。

黒い色をした、ペンキだった。

「何でこんなところにあるんだろう……」

少年は首を傾げた。

その黒いペンキには貼り紙が貼ってあり、何かが書いてあった。

『このペンキをゆきだるまにぬってください』と。少年は書かれているとおり、雪だるまに塗った。

何分かして、少年は黒いペンキを塗り終えた。

すると――黒い雪だるまは一瞬、光を放った。

「うわっ、眩しい……っ」

少年は目を覆った。そして数秒してから目をゆっくりと開いてみる。

特に変わったことはなかった。少年は不思議に思いながら、家の中に戻った。



 

しかし不思議なことが起こる。

その黒い雪だるまは、いつまで経っても溶けなかったのだ。

当初は「まだ寒いから」と少年の家族は思っていたが、その考えはすぐかき消された。

なぜなら、その雪だるまは……“夏になっても溶けなかった”のだから。

そのせいで少年は近所の人、友人までもから「異能者」と呼ばれるようになった。

そう呼ばれるようになってから1週間後、少年と少年の家族は遠くへ引っ越した。



 

少年がその町から引っ越して10年。

少年は、その町に戻ってきた。