「365日とギャラクシー」

 
暑い。冷たい。

そんな日が今日、やってきた。毎年だ。でも今日みたいな日は、1年に一度やってくる。

今日は、七夕。七夕は殆どの確率で雨が降る。蒸し暑いのに、冷たい雨が降る。
 
でも、僕は中学生になるまでそんな日が毎年楽しみで仕方がなかった。「七夕」が楽しみなわけではない。その日に、ある「イベント」があるから楽しみだったのだ。
 
僕にとっての「イベント」、それはある少女に会うこと。
 
その少女は僕の唯一の幼なじみで、幼稚園の頃までいつも一緒に遊んでいた。
 
しかし小学校に上がる頃、少女は転校した。電車で1時間ほどかかるの場所に。滅多に会えないので、僕らは約束した。
 
「年に1回……七夕の日に会おう」と。
 
そして毎年、僕らは七夕に空の眺めがいい場所で会うことになった。小学校6年生までは二人とも来ていた。しかし、中学生になってから少女は来なくなった。中学校が忙しいからなのか、思春期的なアレなのかは不明。僕も次の年から行くのはやめた。連絡すら何もとっていない。
 
今、彼女はどこで何をしているのだろうか。5年ぶりに思い出して、ほのかな新鮮さを味わった。
 
そういえば今日はクラスのみんなとカラオケ行くんだっけ。……ほぼ合コン状態とか聞いた気が。まあ楽しめればそれでいい。
 
僕……星川夏彦は出かける支度を済ませ、家を出た。
 
待ち合わせは近場の駅。徒歩で5分ほどだ。
 
iPodに入った音楽を1、2個を聴いたところで駅に着いた。まだみんなは来ていないらしい。ちょっと早めに来すぎたか。
 
ふと、異様な光景が視界に飛び込んだ。……ナンパ?いや、ナンパにしては何かおかしい。ナンパしている男たちはみんな引いてる。
 
数分後、男たちはみんな去っていった。どんな少女をナンパしたのかと思い、その場に近づいてみた。
 
僕は少女の2メートル手前で立ち止まった。
 
あの楽しみでたまらなかった日々のことが走馬灯のように頭に過った。懐かしいあの少女の顔が、目の前に現れる。
 
そう。ナンパされていた少女は、僕の幼なじみである、天城圭織だった。
 
しかし、何かがおかしい。
 
まず、今の状態。彼女は、今、段ボールの中で体操座りをしている。周りから好奇の視線を向けられているにも関わらず、彼女は全く気にしていない。
 
そして、雰囲気。オーラ。昔の彼女とは全く別人のようだった。服装も異常だということもあるが。
 
すると、彼女はすっと立ち上がり、僕を指差して、言う。
 
「検索完了。No.3、“星川夏彦”認識シマシタ」
 
彼女は、電波化していた。