第一章 【再開。・・・・・・雪だるまと?】
8月29日。
外で五月蝿い蝉の声が鳴り響く。夏の暑さを激しくさせるように。
俺は自室の床に座りこむ。引っ越しの片付けがようやく終わった。
それにしても凄い数だ。中1の頃からギャルゲーを大量に積み上げてきただけある。
タンスが全てギャルゲーで埋まった。俺、どんだけギャルゲーにハマってるんだろう。
中1で先輩から借りたギャルゲーをやってからずっと美少女ゲームにハマっている。
そこから俺は二次元の世界に憧れ、家に引きこもるようになった。
先輩。俺がこんなんになったのは貴方が原因です。
そんなことを思いながら、俺は「PZP」の電源を入れた。
「ちょっと、紅。引っ越しして早々ゲームなんかしないの。せっかく戻ってきたんだから、蒼依ちゃんとかに挨拶してきなさいよ」
「あー、この女の子攻略してからな」
母さんが呆れながら、段ボールを片付け始めた。
俺はふと小学校の頃のアルバムを目にした。俺のクラスだったのページを開き、見る。
明朝体で「岸野 紅」と、俺の名前が書いてある。懐かしい。この頃はまだこんなオタクじゃなかった。
俺は苦笑しながら窓の外を見た。
「あの雪だるま、まだあるのか……」
庭にある、120cmほどの黒い雪だるま。俺が6歳の頃に作った雪だるまだ。
不思議なことに、あの雪だるまは全く溶けない。おそらくペンキを塗ったせいだろう。
「紅、ちょっと買い物行ってくるから、留守番よろしくね」
「了解」
……今の間にちょっと雪だるま見てくるか。
俺はゲームをベッドの上に置いて、外に出た。