そしていつの間にか時間が過ぎ、放課後になっていた。
雪乃は女子たちに「一緒に返ろう」と誘われたが、「紅さんと、帰ります。ごめんなさい」と断っていた。まだ初日だしな。
今日は夏休み明けというのもあるので、午後4時くらいに授業は終わった。ほとんどの人はそれぞれの部活へと向かった。
俺らは暇だったので、とりあえず学校の中を歩き回ってみることにした。
「……意外と広いんだな」
引きこもり(?)にとっては結構キツイ。10分くらい歩いただけで疲れてきた。
雪乃はまだ歩きたそうにしていたが、俺に合わせて一緒に休憩した。
……セーブしてるギャルゲーでもするかな。俺がPZPの電源を入れてゲームを起動させると、雪乃が画面を覗き込んだ。
「これ、何ですか?」
「ゲーム。今度やってみるか?あ、でも雪乃の場合は乙女ゲーのほうがいいか……」
「これで、いいです。紅の、ゲームがいいです」
うーん……引かないだろうか。ちょと雪乃にギャルゲーは早すぎる気がするんだが。まあいいか。
俺がゲームを続けていると、一人の女子が中庭のほうからやってきた。
マズイ。ギャルゲーしてるとこを見られたら俺の学校生活終わる……!うわ、どうしよう!セーブ時間かかる!
俺は急いでゲームを隠す。それと同時に、こちらへ向かってきていた女子が目の前で止まる。
「「……あ」」
俺とその女子が同時に唖然。
俺の目の前に来たのは、昨日洋服店で服を選んでくれた店員だった。
「学生だったんですか」
「ええ。私、そんなに老けて見えるかしら」
「いえ、大人びてる、と言いたいです」
「良く言えばそうなるわね」
黒い長髪が日光に反射してとても輝いて見える。見た目の美貌と制服がアンバランスなのがまた良い。
するとその人は何かを思い出したように言う。
「そうそう、貴方さっき何かのゲームしてたわよね?何をしていたのかしら」
「え゛っ……」
ば、バレてた……!?嘘吐こうにも、バレたらお終いだろうし……。
こういう大人びた人に限って怒ったら怖いんだろうな。……うん、正直に言おう。
「ぎゃ、ギャルゲー、してました……」
「え、ほ、本当……?」
少し驚いた様子だった。引いたか……。
俺はこの学校生活に終止符を打ったことを覚悟した。嗚呼……初日から終わるとはな。何やってんだ、俺。
再び彼女の顔を見上げると、思いもよらないことを発する。
「貴方、ABC同好会に入らない!?」