家に帰ると母さんがニヤニヤしながら待っていた。
「デートどうだった?」
「デートじゃねえよ。ほら、服買ってきたよ」
本は見せられないから言わないようにした。ラノベ買ってあげたなんて言ったらどう言われるか。
母さんは服を取りだし、まじまじと見つめた。
「へぇ、紅にしてはなかなかセンスいいの買ってきたじゃない」
「まあ……」
店員が選んだんだけどね。
「るー、るー♪」
「雪乃ちゃんも喜んでるし、良かったわね」
「ああ」
雪乃は服を大事そうに抱きしめている。本当、良かったな。ある意味、雪乃が俺についてきてて良かった気がする。
……こいつをオタクにするという目標もできたし。
とりあえず今日は満足できたな。
俺は部屋に戻り、眠りについた。
★ ☆ ★
8月31日。
某歌うアンドロイドの誕生日だな、と考える。結構あの子の曲は気に入ってるからすぐ思い浮かんだ。
「紅ー。制服届いたわよ」
「分かった」
朝っぱらから宅配便来たのかよ。でも制服は早く届いたほうがいい。
と言っても、学校はもう明日なんだが。
俺は1階に下りた。
「ほら、一応試しに着てみなさい」
俺は制服を受け取り、脱衣所で着替えた。
「結構いいじゃない。カッコイイわよ」
「ふん、うるせぇ。……って、あれ?何で段ボール、もう1箱あるんだ?」
「見る?見たい?」
「うぜぇ焦らしかたすんなよ……。で、何なんだ?」
母さんはニヤニヤしながら段ボールを開ける。その中身は……
「……何で女子の制服?」
「そりゃあんたなら分かるでしょ?」
「もしかして……」
俺は雪乃のほうに視線を向ける。……嘘だろ。
「そうよ。雪乃ちゃんもあんたと同じ高校に行かせようと思うの。言葉が喋れないのは……まあ、帰国子女ってことで」
「無茶言うなよ……。全然言葉も喋れないし、何かあったらすぐ泣くし、トイレも一人じゃいけねぇし。周りに迷惑かけるどころか、1日中俺がつきっきりじゃないとダメになるじゃないか」
「それは数日で終わると思うわ。だってまだ生まれてから2日しか経ってないけど、もう服を一人で着れるようになったじゃない」
「まあ……そうだけど」
この成長の早さは確かに凄い。試着を一人でできてたのは俺も驚いた。
しかしいつになったら言葉を発せれるようになるのか……。
「そんなわけで、紅。明日、雪乃ちゃんをよろしくね」
「マジかよ……」
俺は溜息を吐きながら、嬉しそうに制服を抱きしめる雪乃を眺めていた。