「……はぁ」

とりあえず溜息を漏らした。……状況を整理しようか。

まず黒い雪だるまが光って、目を開いてみたら服を一枚も着ていない少女が居て……。

ああ、もうこの時点で理解不能だわ。一応この子になんか質問するかな。

「なあ、お前誰なんだ?」

少女は首を傾げるだけで、何も言葉を発さなかった。

何で何も喋んないんだ?もしかして言葉が分からないとか……いや、そりゃないか。

ふと、俺は少女の胸元に目がいった。つるぺただ。美少女ゲームによくあるキャラだな。

すると少女は俺の鼻の下辺りを指さした。疑問に思い、鼻の下を触れてみる。

「……うぉっ」

鼻血が出ていた。そうだよな。女の子の身体をガン見してたらそりゃ鼻血出るわ。興奮していない俺が凄い。鼻にティッシュでも詰めとこう。

このままじゃこの子風邪引くかもしれないから、とりあえず俺のセーターでも着せるか。

俺はクローゼットからセーターを取り出し、少女に渡した。

「?」

「それ着ておけ。かなりデカいと思うけど、風邪引くよりマシだろ?」

少女は「貴方の言っている意味が分かりません」という表情をする。え……マジで?マジで言葉分からないのか?

もしかしてこの子、外国人だったり……。そうだよな、銀髪碧眼だもんな。色もかなり白いし。

でも俺英語苦手なんだけど……。ジェスチャーで通じるかな。

俺はセーターを着る動作を見せたが、少女は首を傾げるばかりだった。

「……もうダメだこりゃ」

俺は溜息をつき、俺が着せることにした。

少女の腕に袖を通し、ボタンを留める。ふと、少女が手にしている物が目に入った。

「何だこれ?花?」

見た目はスズランのような花だった。白く、小さな花が茎の先についている。

俺の行動に気づいた少女は、その花を1本渡してくれた。

「あ、ありがとう」

貰ったのはいいけど、どうしろと。後で花瓶に入れとくか。

少し少女の髪がボサボサになったので、手で梳いてあげた。そこでまた異変に気付く。

「三日月……?」

少女の首の後ろには、三日月のタトゥーのようなものが入っていた。ああ、もう意味わからん。

あ……。この子を家に連れ込んだのはいいけど、母さんに見つかったらどうしよう。

何か変な目で見られそうだな。何処か隠し場所があればいいのだが……。
 

唯一あるのはクローゼットくらいだよな。まあ、バレないか……。
 

俺がそう考えていると、後ろから少女が俺の服の裾を引っ張った。
 

「どうした?」
 

少女が上目遣いで俺を見る。

 

何かを言いたそうだったが、凄くモジモジしていた。

「……もしかしてトイレ行きたいのか?」

「ふぇ……」

「え?」

「ふぇぇぇぇぇん!!」

「えぇ!?」

少女は急に泣きだした。え、え!?俺なんかした!?いやいや、何もしてないよ!

でもさっきからずっとモジモジしてるからトイレだろう。多分……。

俺はすぐにトイレへ連れて行った。この子……もしかして赤ちゃんと同じ感じだったりするんだろうか。

もしそうならかなり大変だぞこりゃ……。

俺が少女をトイレに入れた瞬間。

玄関のチャイムが鳴り響いた。