――なんだかんだで翌日。
8月30日。明後日だな、学校……。ちゃんと喋れるかな。って、俺は初転校の小学生か。いや違うけど。
俺はそんなことを考えながら1階に下りる。
「うー、うー♪」
「……」
「あら、おはよう。珍しく早いのね」
……夢じゃねぇんだ。マジで黒い雪だるまから雪乃は生まれて、そして俺の家に住んでるんだ。
何だこの非現実。何だこのラノベ的展開。
「なあ母さん。まだ雪乃、喋れないのか?」
「そうみたいねぇ。でも大丈夫でしょ。そのうち喋れるわよ」
「だといいけど……」
えーと……あ、そうか。今日は雪乃のために本を買いに行くんだったな。
ついでだから服も買ってやろうか。流石に俺や母さんの服だと少し大きいからな。
俺は支度を済ませ、家を出た。
まず本を買おうか。どんな本がいいんだろう……。やっぱ絵本とかがいいかな。
でもあの見た目だったらもう絵本っていうのもなぁ……。教育テレビとかも嫌がってたし。
だとすれば……。……。
「いや、流石にラノベは、なぁ……」
……。……試してみるか?
「うーっ」
「うーっ!?」
俺の背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ゆ、雪乃……!?い、いつからそこに!?」
どうやらずっと背後に居たっぽい。何で俺、気づかなかったんだ……。
ちなみに服は母さんが若かった頃に着ていた服だと思う。白くて清楚なワンピースだ。
すると雪乃は突然、迷いもなしに1冊のラノベを手に取った。
そのラノベは今とても大人気のラノベで、アニメ化もしている作品だった。雪乃はそのラノベをとても欲しそうにしている。
「見る目あるな、こいつ……」
思わず感心。その後も、大人気のラノベばっかり欲しそうにしていた。
もしかしたらこの子……。
「神髄のオタクになれるかもしれない……」
そう感じたのは直感だけれど。
……この子を俺の好きなように染めていいだろうか。だってあの日も俺がこいつを染めたのだから。
「……よし」
俺は雪乃が最初に手に取ったラノベを購入し、店を出た。