「……は?」

 

先ほどとはまた違った、喜びに満ちた表情で言ってきた。顔が近いぞ、おねーさん。

 

とりあえずさっき口にしていた、ワケのわからんワードについて問う。

 

「ABC同好会って、何ですか?」

 

「まず、『A』はアニメ、『B』は美少女ゲーム、『C』はコミック。学校では部活として認められていないから、今は同好会として活動しているの。私はそんな同好会の部長、3年の紫崎美愛よ」

 

「大体の活動内容は把握しました。俺は岸野紅、こいつは黒岸雪乃です。2人とも2年生」

 

「そう。よろしくね、2人とも」

 

「何かその言い方だと俺ら、その同好会に入会する雰囲気じゃないですか」

 

「あら、そう聞こえた?でも貴方たちを誘っているのは確かよ」

 

この人……身を引く気はまったくないな。でも……ABC同好会かぁ。この学校、いい部活ないし。入ってみる価値はあるかもな。

 

いや、……うーん。もしクラスの人たちに、俺がABC同好会に入っているということが知れたらどうなるだろうか。

 

一部の人たち以外は引くかもしれない。特に女子は。帰宅部になることが一番賢明かもな。

 

「一応考えておきます。明日にでも伝えに行きます」

 

「そう。一度だけでもいいから部室に来てみたらどうかしら。ここが部室よ」

 

「はい、分かりました。……?」

 

俺は受け取った地図を見て首をかしげた。

 

「……屋上?」

 

「えぇ。この学校の屋上には一つの教室があるの。そこがABC同好会の部室よ。それじゃ、また明日ね」

 

紫崎先輩は手を振ってそのまま去って行った。……行ってみる価値はあるかもな。

 

「紅さん、私、いってみたいです」

 

「まあ俺も行ってはみたいけども。明日一緒に行くか?」

 

「はい!」

 

雪乃は凄く明るい笑顔で答えた。

 

この一度行くだけが、俺の……いや、俺たちの人生が変わるとも知らず。