HR後、蒼依が俺の席のほうへ来た。

 

「ねぇ、紅。雪乃、喋れるようになったの?」

 

「ああ。今日の朝急に喋ったからビックリしたわ……」

 

まさか喋るとは思わないもんな。俺は頬杖をついて雪乃のほうを見る。

 

人集ってんなぁ。特に男子。女子もまあまあいるけど。すると一人の女子が俺のほうへ近づいてきた。

 

「なぁ転校生くん!君かっこええね!」

 

「はっ?え、何ですか急に」

 

急になかなかの巨乳でポニーテールの美少女が俺に話しかけてきた。これはこれは、ギャルゲーに居そうな人だな。

 

「何となくそう思っただけよー。何じゃったっけ、名前」

 

「かっこいい思うなら名前覚えてくださいよ。岸野紅です」

 

「敬語やめてや。タメ口でええよー」

 

「あぁ、うん……」

 

えぇー……、何この人。急に話しかけてきたし。急にかっこいい言うし。

 

そしてどこの方言?まあ関西のほうだろうな。

 

「ちょっと、翠。急に何話しかけてきてんのよ」

 

「ええじゃんかー。転校生くん、面白そうじゃん」

 

「た、確かに面白いしかっこいいけど……。で、でもあたしの幼馴染よ!」

 

おい。幼馴染だからどうっていうんだ。そして別に俺は面白くないしかっこよくないってば。

 

「話しかけちゃいけねぇってことはないだろうよ。俺も友達増えればそりゃ嬉しいし」

 

「そりゃそうだけど……。……も、もういいわよ」

 

蒼依は顔を赤くして教室を出て行ってしまった。何がしたかったんだあいつ。

 

「そういえば言い忘れとったね。ウチ、望月翠ね。よろしく、転校生くん!」

 

「あ、ああ、よろしく」

 

手を差し伸べられたので、とりあえず握手しといた。元気な大人って感じだなぁ、この人。

 

すると周りから視線を感じた。見てみると、クラスのみんなが若干こっちを見て笑ってる。

 

……?一体なんだろう。俺は特に気にせず、正面を向いた。